木材学 エレキギター・ベースに使われるちょっとマニアックなボディー材4種

2014年9月22日

それ程見かけるわけでもないけれど、よく耳にするボディー材たち

さて、前回はエレキギターやベースに使われるメジャーな木材を紹介しましたが、今回は同じくエレキギターやベースには一般的ではないけれど、時々見かけるちょっとマイナーなものをご紹介します。

前回紹介した5つの木材に加え、今回解説するちょっとマニアックな材たちも憶えて置くとなお良いでしょう。

 

1.ローズウッド Rosewood

ギター・ベースの指板やアコギのサイドバックによく使われるローズウッド

指板材として、またアコースティックギターのサイド・バック材としてお馴染みのローズウッド。

しかし堅く油分が多いため加工性が悪いうえ重量もあるためエレキギターやベースのボディーには向かない材です。

管理人もローズウッドがボディーに使われているモデルはエレキギターでただ一つ、フェンダー社のTL-ROSEというモデルしか知りません。

TL-ROSEボディー

オールローズという通称で呼ばれる変わり種モデル

フェンダージャパン謹製。いわゆる「 オール・ローズ 」です。

TL-ROSE ヘッド

ヘッド表面もローズウッド(ツキ板)というこだわりぶり

ローズウッドボディーとは言っても実は2枚のローズウッドの間に1枚薄いバスウッドをサンドした3プライ構造です。

材の狂いや音響的なバランスの問題をクリアするためかと思われますが、それでもやはりバスウッド製のボディーのギターに比べると、オールローズ独特のサウンドがあります。

オールローズのテレキャスターって、かなり変わり種なのに意外と有名なんですよ。というのも、かのビートルズの名曲 Let it be でジョージ・ハリスンが使用したから。

といっても記録に残っているのはレコーディングで一回、ライブで一回だけらしいですけど。

2016年3月追記

Fenderカスタムショップにてジョージ・ハリスンに敬意を表し、オールローズモデルの復刻版が発表されました。

日本での定価は178万とかなり高価ではありますが……

ローズウッドボディーの音質

ローズウッドボディーのギター自体があまり出回らずそもそも評されることが少なく、あくまで管理人個人の感想。

アタック感はありながらも角は丸く、中音域の粘りもあり、芯の太さと角の丸さが混在した独特なサウンド。

といったところ。自分でも書いててよくわからん文章ですが、本当に独特で形容しがたいサウンドです。

ボディー材にローズウッドを使ったギターは上記の通りオール・ローズモデルのテレキャスターくらいしかないので他の要素を排除できず、これが本当にローズウッドボディーだけの特色なのかはなんとも言えない部分はあるのですが。

もしオール・ローズを見かけることがあったら、是非一度弾いてみてください。そのクセあるサウンドは他ではなかなか味わえるものではありません。

2.パドゥーク Padauk

パドック材画像(JackSpiraGuitarsより引用)

Jack Spira Guitarsより。

パドゥークはアフリカ原産で赤みの強い褐色のマメ科の木材です。パドックとも。

これまたあまり使われることのない木材ですが、代表例としてはWushburn社のN4など。

N4はヌーノ・ベッテンコート氏のシグネイチャーモデルシリーズで、その中にN4E PNMがパドゥークを使用しています。

パドゥークの音質

パドゥークは硬めで締まりがよく、抜けのいい音響特性を持っています。

3.ウォルナット Walnut

ギター・ベースで使う木材としては少し珍しいウォルナット

ウォルナットは色の濃い褐色の木材。その名の通りクルミの木です。

重量があるため、ボディーに使われることは少ないですのですが、一部メーカーが好んで使い、愛好家も意外と多い木材ですね。

ボディー材で使われるのはやはり稀ですが、ギター・ベース界では特定の用途に結構よく使われています。

実はフェンダー系のエレキギター・ベースのネック裏のラインの部分、あれがウォルナット。

バーズアイネック

メイプルネックのこの茶色いラインがウォルナット

ネックにトラスロッドを埋めるために掘った溝を再び埋めるためによく使われているのです。

ウォルナットの使用例

ウォルナットはmoonのエレキギター・ベースによく見かけます。また、リッケンバッカーの360でもウォルナットバージョンがあったり。

フェンダージャパンにJB-62WALというウォルナット風のジャズベースがありますが、これはアッシュボディーをウォルナットっぽい色に塗装しただけ。

公式のカタログにもちゃんと記載されています。

ウォルナットの音質

ウォルナットは音響特性的には立ち上がりが早く硬く芯の有るサウンドで、メイプルに似ているとよく評されます。

そのお陰か、特にウォルナットボディーはギターよりもベースの方が人気があるように感じます。

(※あくまで管理人の体感上)

4.セン(栓) Sen

本来はハリキリという種類の木材ですが、センという別名の方が有名な木。

日本に広く分布している木材です。海外ではジャパニーズアッシュなんて言われることも。

鬼栓(オニセン)糠栓(ヌカセン)という種類があり、鬼栓の方が重く強度に優れており、糠栓の方は鬼栓に比べ軽量です。

センとアッシュ

センは国産ギター黎明期にアッシュの代替材としてよく使用された木材。当時一部メーカーがアッシュとして売り出したこともあり、アッシュと同じ材として扱われることもあります。

昔センを使った物もカタログ上でアッシュと謳っていたメーカーもあり、そういった経緯でアッシュと同類として扱われる(混同されている?)模様です。

近年ではホワイトアッシュと似た違う木材として扱われることが増えています。

センの音質

鬼栓も糠栓も外観はどちらもアッシュによく似ていますが、糠栓は音色にクセが少なく、どちらかと言うとアルダーやバスウッドに近いと評されています。

一方、鬼栓はアッシュに近いメリハリの効いた音響特性を持ってはいますが、ハイは少し角が丸くローも少し弱いので、アッシュに比べクセがないと評されています。

とはいえ、セン自体が個体による重量にムラが多く、その重量によってサウンドが左右されやすいため、音色に関しては一概に言えない部分があります。

まとめ:・ベースに使われるマニアックなボディー材

ちょっとマイナーなエレキギター・ベースのボディー材編、これにて終了。

もちろん、マニアックなボディー材は今回紹介したセン・ローズウッド・パドゥーク・ウォルナット以外にもたくさんあるのですが、挙げていくとキリがないのでひとまずはこれだけ知っていれば無難、というところまでまとめました。

とは言っても特定のメーカーの特定のモデルにしか使われないので知識としての需要は微妙なところですが……