ムスタングのフェイズアウトサウンドはなぜペラペラになる?

フェイズアウトサウンドの独特な音色の秘密

ムスタングに代表されるあの独特のフェイズアウトサウンドが生まれるのか…

今回は電気知識的なお話で、その秘密に迫ります。

なお、他のギターでも配線次第でフェイズアウトサウンドを出すことは可能ですが、特に改造の必要なく逆位相にできるギターの中で最もメジャーなのでムスタングを例に解説します。

フェイズアウトサウンドは原理的には全て同様だと思っていただいて構いません。

ムスタングのピックアップのコントロールやスイッチングについては前回の – ムスタングのスイッチと各部コントロール【噂のみゃんみゃんサウンド】– で解説していますので、こちらをご覧ください。

フェイズアウトサウンドと逆位相、そして信号

実を言うとムスタングのオン / オフ / オンのピックアップスライドスイッチは、オン(+) / オフ / オン(-)と、左右のオンで極性が真反対になっています。

オン / オフ / フェイズ などと解説されることもありますが、このフェイズが-だと思ってください。

まず、リアピックアップのスイッチを+側にして弦を弾いて時、このような信号だったとしましょう。

ムスタングのコントロール-ピックアップスイッチの仕組み リアだけオン
そして、図1に加えてフェイズアウトにするためにフロントピックアップはリアとは逆方向、-側にカチリしたものが、次の図2。

ムスタングのコントロール-ピックアップスイッチの仕組みフェイズアウトサウンド

このように同じ弦の振動を信号にするのでも、フロントは下側から振れはじめリアとは正反対の形になります。

この二つの信号は一つの信号にミックスされるわけですが、信号が+と-の足し算なので互いに打ち消し合ってしまいます。

5+5=10でも、5+(-5)は 5-5=0 なのと同じ。

こうした逆の信号を合わせることを逆位相といいます。(ちなみに逆位相を英語で言ったものがフェイズアウト。フェイズインは正位相です)

図2の例では全く同じ波形なので、逆位相では信号が完全に消えてしまい、音が出ません。

けど、現実にはフロントピックアップとリアピックアップは音が違い、音が違う=信号の形も違うので、逆位相で打ち消し合っても信号は完全に消えずに少し残ります。

この逆位相で打ち消し合って残った信号が、フェイズアウトサウンドの正体なのです。

だからどこかパワーのない間の抜けたような軽いサウンドになるのです。

スイッチの向きが違うのになぜ同じ音になる?

スイッチに属性があると+か-かで音が変わりそうなもんですよね。

図2のように+だと上から、-だと下から信号がスタートするわけですから。

でもムスタングをお持ちの方ならご存知のはず。

実際にはスイッチの組み合わせが大事で、スイッチが+側でも-側でも聴覚同じ音になります。

例えばリアだけorフロントだけ使う分にはスイッチをどちらでオンにしても同じ音ですし、フェイズインで両方を+か-にしていれば同じ音です。

フェイズアウトの時でもリアとフロントが逆になっていれば、どちらが+でどちらが-でも同じ音です。

これはなぜか、リアピックアップを例に見て見ましょう。

ムスタングのコントロール スイッチどちらでも同じ音なのはなぜ

図2とほとんど変わってないのは内緒だぞッ★☆

おさらいですが、弦の動きを電気信号に変える際、ピックアップのスイッチがプラスだとグラフの上に向かって振れ始め、マイナス側に動いて戻ってきます。

スイッチが反対側でオンになっている場合は、マイナスなので反対の下方向から信号が動きます。

しかし、これは同じ形の信号が上下逆さになっているだけ。

私達人間が聴いているのはこの信号の動き=弦の動きが1秒間に何十回、何百回、何千回と繰り返されたものです。

図の上~下、もしくは下~上の一連の動きが1秒間に何回繰り返したかが、周波数、そして音程になります。

(中学の理科の授業でやったところだ!)

単純な話、信号にする時に信号が上からスタートしようが下からスタートしようが信号を繰り返す回数=周波数が同じなので、音程は同じ。

そして音色を決める信号の形も上下逆になるだけで同じなので聴覚上同じ音色になります。

振れ始めが+からか-からかは弦が指板の上で上から震えはじめたか、下から震えはじめたかの違いみたいなもの。

+だから音が明るいとか-だから暗いとかはないのです。

確かに信号のスタートがマイナスかプラスかでスピーカーの震え方が微妙に変わるでしょうから、厳密には全く同じ音とは言えないでしょう。

しかし、人間の耳で聴き分けられるレベルではありません。

もしかしたら訓練によって聴き分けられるようになったスゴイ人がいるかもしれませんけど…

正直そんな訓練する暇があったら絶対音感を目指すとか、他にもっと有益なことありますよね。

まとめ

元々パワフルとは言い難いムスタングですが、フェイズアウトサウンドが非力と言われる一因になっている面も。

逆位相によって生まれるフェイズアウトサウンドは、ある意味ではやせた音とも言えます。

信号を拾って出力するにあたって逆位相にすると信号が劣化するだけでメリットがなく、少なくともオーディオの配線のセオリーには反しています。

でも、音楽を再生して楽しむオーティオとは違い、音楽を奏でる楽器では信号的に劣化した音=悪い音とは限りません。

今では当たり前になっているディストーションやオーバードライブなどの歪んだ音だって信号としてみればひどいものです。

本来歪みは、いかにクリアーでキレイな信号を作り出すかに苦心しているオーディオアンプの世界では忌避すべき存在でした。

しかし、ギターの世界では音量を求めてアンプのボリュームをあげまくった結果出た歪んだ信号の音が「 クールな音だ! 」と受け入れられ、今ではオーバードライブやらディストーションやらでエレキギターのスタンダードサウンドとなっています。

残念ながらムスタングのフェイズアウトサウンドはスタンダードになるには至りませんでしたが、愛好家も多くサウンドバリエーションの一つとして受け入れられています。

結局は音を出す人・聴く人が気に入れば、どんなにひどい信号の音でもそれはいい音色なのです。

もしかしたら、ムスタングがフェイズアウトサウンドを出せるのは、信号が~劣化が~とばかり言わずまずはその音を楽しんでみてくれ、というFenderからのメッセージなのかもしれませんね。

なんちゃって。

 

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