楽器業界におけるブランドとメーカーの違い

2015年1月7日

ブランドとは何か

楽器業界イメージなんだか楽器の知識のお話ばかり続いてしまったようなので、たまには楽器業界のお話も。

今回はブランドとは何か、というお話です。

とはいっても、ブランディングだとか差別化だとか難しい話は出てきませんので、アレルギー持ちの方もご安心ください。

そもそも、このブランドと言葉というメーカーという言葉の意味を混同しているというか、同じようなものだと思っている人が意外と多いんです。

ブランドとメーカーがどういった関係性なのかよくわからないという方は、楽器業界について知る第一歩としてお読み頂ければと思います。

ブランドとは苗字みたいなもの

ブランドとは特定の商品群の名前です。

その商品達には一つ一つのモデルごとに型番という名前もあります。

ブランド=ある家系(商品)につけられた苗字で、モデル名が下の名前と置き換えればわかりやすいと思います。

ブランド名が姓モデル型番が名、というイメージです。

例えば、フルートでMURAMATSUというブランドの EX-RCどいうモデルと、YAMAHAブランドの YFL-211というモデルが実在しています。

このMURAMATSUやYAMAHAというところが苗字で、EX-RCやYFL-211というのが各モデルの名前のようなものです。

おばちゃんたちの世間話の体でいくと・・・

ヤマハさんところのかーちゃんとムラマツさんところのかーちゃん

主婦かーちゃんYAMAHAさんと金持ちかーちゃんMURAMATSUさんの会話

ヤマハ家のかーちゃん「 ほーんとムラマツさんところのEX-RCくんはさすが優等生ですよねぇ。あんな立派な頭部管でホンットいいとこのおぼっちゃまって感じですものねぇ 」

ムラマツ家の母「 いーえー、ヤマハさんところのYFL-211ちゃんこそお金もかからなくていいですわよぉ。高いEの音も器用に出せるし、コスパも高くっていいですわぁ 」

ムラマツ家の母「うちの子なんてお金ばっかりかかっちゃって。頭部管が銀製ってだけでなーんにもできないんだから。地頭はいいんだけどねぇ。ホント頭部管が銀製ってだけなんですから~。オホ、オホ、オホホホ 」

 

・・・こんな例えが適切かどうかは別にして。

と、ともかく、ブランドというのはその商品をイメージするのに大切な役割を担っています。

DS-CCEだとかST54/VSPだとか言われても、知識がないとそれがなんなのかはピンときません。

が、これがムラマツとかFenderと言われると、それが実際どのモデルかまではわからずとも、ブランド名だけでなんとなくどういったものかイメージができます。

ああ、「 ムラマツのフルートなんだな、じゃあ日本製でそれなりに高そうだな 」、だとか、「 Fenderかぁ、安くても数万はするなぁ。でも良い音なんだろうなぁ 」 だとか。

ルイ・ヴィトンといえば高い財布かバッグ、フィリップスといえばノンフライヤー、ダイソンといえばフィルターの要らない掃除機か羽の送風機、と言う風に連想されるのも、ブランドの効用。

その名前だけでどういうものかイメージがつく、それがブランドの役割の一つです。

まずブランド名でイメージが湧かせてから、 「 カバードキー仕様の総銀製フルート! 」 などと特徴を挙げたり、 「 1954年当時の仕様を再現したスペシャルなストラトキャスター! 」 などと愛称も交えて言えば販売側としては効果的ですよね。

ただ 「 この人は道明寺さんです 」 だとか 「 この人は牧野さんです 」 なんて言うよりも、F4リーダーの道明寺さんだとか、庶民派で玉の輿の牧野さん、などと言ってあげた方がわかりやすいのと同じです。

・・・・それは違うか。

ブランドの語源ともう一つの役割

もともとブランドという言葉には、放牧していた家畜が自分の所有物であることをわかるようにするために焼印の意味があるそうです。

バッグやサイフなんかでもそうですが、楽器にも焼印だったり刻印だったりでブランドのロゴが入っています。

ギターやベースであればヘッドロゴ、アコギの場合はヘッドロゴやボディー内のラベルだったり、管楽器であればベルとか管体に刻まれたロゴだったり……

市販されている楽器の場合、本体のロゴを見ればどこのブランドのものかがすぐに知ることができます。

ブランドロゴの場合はその意味合いは所有を現すというところから転じて、その商品がそのブランドのものであるという目印のような扱いになっています。

そのブランドロゴが入っている製品の品質を保証する信頼のマークのようなものです。

これもブランドの大事な役割の一つですね。

メーカーとブランドの違い

広義でのブランドの概念自体かなり掴みづらく、管理人もきちんと理解できているかあまり自信はありませんが、なんとなくでもどういったものかはおわかり頂けたと思います。

続いて、メーカーとは何か、というところ。

メーカーという言葉を直訳すれば造る者という意味になりますが、だからといって単に工場や職人さんのことを指しているわけではありません。

実際にそのブランドの商品を主体的に企画・運営する製造元の会社がメーカーです。

メーカーの形態は様々ありますが、実際の製造はよその工場に委託している場合でも、そのブランドを手掛ける製造元であればメーカーということになります。

ブランドの意味とメーカーの意味は混同されがちですが、ブランドは特定の製品群のことで、メーカーはそのブランドの製品・管理したり企画・運営する会社を言う、という違いがあります。

具体的なメーカーとブランドの関係の実例

例えば、YAMAHAというブランドがあります。

2015年現在、そのYAMAHAブランドを運営しているメーカーはヤマハミュージックジャパンという会社です。

YAMAHAというブランドをヤマハという会社が運営しているんです。

世界的に最も有名なブランドがこんなだから、ブランドとメーカーが同じようなものだ、と思われてしまうことが多いのかもしれません。

他にもSANKYO Fluteブランドであればメーカーは三響フルート製作所で、K.Yairiブランドであれば株式会社ヤイリギターがメーカーだったり、似たような例はかなり多く見受けられますが、ブランド名とメーカーの社名は必ずしも同じとは限りません。

例えば、AriaPro2(アリアプロ2)というエレキギター・ベースのブランド。

ジャパンビンテージの本なんかでもよく出てくるような有名な老舗ブランドですが、そのメーカーはアリアギターズだとかアリアプロだとかそういった社名ではなく、 『 荒井貿易 』 という会社です。

Ariaというのは多分Arai(荒井)のモジりだとは思いますが、このようにメーカー名とブランド名が一致しない場合も多々あります。

他にもIbanez(アイバニーズ)というギター・ベースブランドのメーカーも 『 星野楽器 』 と、ブランド名とメーカー名が異なります。

楽器業界を目指すという方はブランドとメーカーは同じのようものという認識は捨てましょう。

※今回、色々と例として固有のブランドとメーカーのことを書きましたが、固有のブランドとメーカーの関係性は変わってしまう可能性があります。

ブランドの商標が別の会社に買収されてメーカーが変わってしまったり、社名が変わったりなどなど。

実際、YAMAHAブランドのメーカーであるヤマハミュージックジャパンも2014年に社名と体制が変わったばかり。

あくまでも例として出しただけですので、個別のメーカーとブランドの関連性についてはあまり参考にしないようにお願いします。

まとめ

・ブランドとメーカーという言葉は混同されがちだが、全く異なるものである。

・ブランドとはいろいろな商品たちを一括りに束ねるの苗字のようなもので、メーカーとはそのブランド商品の製造・販売元の会社を指す。

楽器店の店員になれば、ブランドの商品を様々な形で仕入れたり販売したり、またメーカーに修理に出したり、様々な形でメーカーと関わりを持つことになると思います。

そんな時にブランドとメーカーを混同して面喰わないように、ぜひこのことを憶えておいてください。

さて、今回はブランドとメーカーというものに着目しましたが、メーカーと商品と楽器店だけで楽器業界が完結するかというと、そうではありません。

メーカーに近い存在でありながらちょっと違った役割を持つ卸や輸入代理店などという存在も、今の楽器業界には欠かせません。

今回は随分長くなってしまいましたのでまた次回以降になりますが、この辺りについても解説していきます。

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